肺癌の治療

[疫学]
肺癌による死亡数は1998年以降、胃癌を抜いて第1位となり、今後も増加傾向にあります。胸部レントゲンによる検診での早期発見が難しく、初診時に肺癌と診断される半数以上の方が手術不能例であります。また、術後5年生存率も非常に悪く、胃癌の1期(早期)の5年生存率が95%であるのに対し、肺癌の場合、1期(早期)で約70%であります。
図1:肺癌術後5年生存率[組織、進行度]
肺癌には大きく分けて、腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌、小細胞癌に分けられます。この中で小細胞癌は非常にたちが悪く、進行が早いため、治療については小細胞癌とその他の非小細胞癌に分けて考えられます。
進行度は、リンパ節転移がないものを1期、癌の近くにだけリンパ節転移があるものや胸壁に浸潤しているものを2期、少し離れた部位にまでリンパ節転移を認めるもの、悪性の胸水を認めるものを3期、他の臓器に転移しているものを4期としています。進行度によって治療方法が異なります。

[診断方法]
胸部レントゲンで異常陰影がある場合、胸部CT検査を行います。CTで肺癌が疑われる場合、喀痰検査、気管支鏡検査にて確定診断を行います。診断がつかなかければ、経皮的針生検(局所麻酔)、胸腔鏡下肺生検(全身麻酔)を行います。
気管支鏡検査

[治療方法]
肺癌の治療方法には1.手術、2.抗癌剤、3.放射線療法があります。
1.手術
完治を目指すのであれば、手術療法となりますが、その適応は、進行度が3期の一部まで、全身麻酔に耐えれること、肺機能が良いことなどが挙げられます。
2.抗癌剤(化学療法)
3期の一部、4期の場合、手術ですべての癌を切除することはできないため抗癌剤による全身治療となります。抗癌剤には、吐き気、白血球減少、脱毛など副作用があります。最近では、副作用を軽減する薬剤が使用され、外来通院(外来化学療法)での治療も可能となってきましたが、効果については、約30-40%しかありません。
外来化学療法
3.放射線治療
3期の場合、化学療法と組み合わせて施行されます。また、抗癌剤の効きにくい脳転移や骨転移による痛みを緩和するために使用されます。また、1期でも肺機能が悪くて手術ができない人に使用されます。

高齢者や自分の信念などで積極的な治療を望まない人には、対症療法といって、咳止め、痰切りを処方したり、痛みのコントロールのみを行ったりしています。

いずれの治療方法も、長所、短所があります。担当医に充分に説明してもらい、家族とも相談の上、納得のいく治療方法を選択しましょう。最近では、セカンドオピニオンといって他院の医師の説明を受けたりすることもできますので積極的に行いましょう。途中で治療を変更したり、中止したりする事も可能です。

検査は主に外来通院で行いますので、手術のみの場合は、約2週間の入院が必要です。手術後に抗癌剤治療を行う場合は、初回のみ入院で行い、副作用を見ながら、以後は外来通院で行っておりますので、約1週間の追加入院が必要です。希望すれば、入院での化学療法も可能です。放射線治療が必要な場合は徳島大学などに紹介し、共同で治療を行っております。

[術後化学療法]
肺癌は微小転移が多いことから、局所療法である手術単独ではなく、全身療法である化学療法との組み合わせが予後を改善するのではないかということで、術後補助化学療法について各国で大規模な臨床試験が行われてきました。しかし、肺癌に対する化学療法の感受性の低さのためか、あまり有効な結果が得られず、2003年の肺癌診療ガイドラインでは、あまり推奨されておりませんでした。しかし、2003年頃より術後の化学療法の有効性を示すデーターが報告されるようになりました。

図2 術後化学療法の再発抑制効果これらの結果をうけて、本邦でも2005年の肺癌診療ガイドラインにおいて術後の補助化学療法は推奨されるところとなり、標準治療とされております。しかし、現在のところ、最も有効な薬剤は何であるか、どの病期に対して使用すべきなのかは、まだ、はっきりしていません。
当院では、以前より3期に対する術後補助化学療法は行ってきましたが、2005年からは1、2期に対しても行うようにしております。また、2006年から徳島大学病院呼吸器外科が行っている臨床比較試験にも微力ながら協力し、今後、最も有用な対象病期、最適な治療薬剤は何かということを検討していきたいと思っております。